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明るい狂気と病的細密描写「刑務所の前」第1〜2集:コミック

刑務所の前 (第1集) 刑務所の前 (第1集)
花輪 和一 (2002/11)
小学館

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漫画家・花輪和一氏の「刑務所の前」は、この前エントリーした「刑務所の中」より以前の話を克明に物語ったもの。つまり、氏がなぜ銃刀法違反で3年の刑に服す事になったのか、それまでのいきさつを語ったものです。

ただし、そこは鬼才である花輪氏、ストレートな構成にはなっていません。無類のガンマニアであった当時の自分と、逮捕後の獄中生活、そして業に苦しむ人々の時代劇が渾然一体となった幻想的ストーリーになっています。


僕自身、中学・高校時代は月刊誌「Gun」を定期購読するガンマニアだったので、銃を愛好する氏の気持ちが痛いほど良く分かりました。「もろずっぽぬけ」とか「やっぱ、ガバだよね…」とか、銃に関する「萌え」な気持ちを見事に代弁してくれています。僕なんかの中途半端な愛好レベルでは、危険を侵してまで実銃を持ってみたいとは思いませんが、氏の銃に対する偏愛は、一般の常識レベルを遥かに超えたもの凄いエネルギーを生み出し、自らの手に実銃を引き寄せていったのでしょう。これも業の業たるゆえんかも知れません。

業といえば、同時に進行していく時代劇の方もなかなか読み応えがあります。こちらはフィクションですが、業に苦しむ花輪氏自身の内面がよく映し込まれていると思います。家を捨てて先祖代々引き継いで来た因業から解脱しようとする富豪の娘、そしてそれを手助けする、家の中に幸せが一つしかない鉄砲鍛冶の娘、人間の表層しか見えない世間の人々などの織りなす幻想的なストーリーがとても興味深いです。

そういった幻想的時代劇と、錆びて朽ちかけた実銃(M1911A1 ガバメント)を手に入れて、それを異常な執着心で修繕していく花輪氏本人の姿とが、交互入り乱れて渾然一体となり、不思議で魅力的なストーリーが展開していきます。

ところでこのコミックには、巻頭にカラーイラストがついています。また、第2集では本文の数ページがカラーになっていて、着彩版花輪漫画が楽しめます。花輪漫画といえば、病的なまでに多くの細かい線が描き込まれた絵をまず最初に思い浮かべると思います。ところが僕は、この水彩絵の具のような筆のタッチで、丁寧に塗り込められた絵を観て以来、花輪漫画といえばまずこの絵を思い浮かべるようになりました。色彩のトーンが豊かで、ディテールが上品に描かれており、非常に美しいと思います。彼のペンタッチというのは、描くほどにどす黒くなって重みと凄みが増していく傾向がありますが、筆のタッチは重ねるほどに微妙な色のニュアンスを表現し、筆致が柔らかいので、あまり重くならず深みと温かみのある良い感じになると思うのです。花輪氏には、今後もカラーイラストの作品を描いていただきたいなぁ…と思います。

第2集までじっくりと読み終えて、早く続きが読みたくなりました。第3集にはぜひ、カラーページをもう少し多く入れていただきたいと、我がままなお願いをしてみる僕なのでした。

◇「刑務所の中」これまでのエントリー
この面白さは何なのか?「刑務所の中」:コミック
http://sketchlife.blog44.fc2.com/blog-entry-123.html
「刑務所の中」雑感その2
http://sketchlife.blog44.fc2.com/blog-entry-124.html

◇「刑務所の前」第1集 / 花輪 和一

◇「刑務所の前」第2集 / 花輪 和一

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